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ほんとにイヤな奴でも、J・プレスを着ると、 「粋な悪役」みたいになっちゃって…。
雑誌
小さめの貝ボタンを、洗面所で拾った。 J・プレスの、衿先のボタンだな。
目玉焼(めだまやき)が欲(ほ)しくても、鶏(にわとり)が卵(たまご)を産(う)ま なければ食(た)べられない。ミルクが飲(の)み たくても、牛(うし)が乳(ちち)を搾(しぼ)らせてくれな ければ手(て)に入(はい)らない。機械(きかい)やら電気(でんき) やらも万能(ばんのう)ではありません。私(わたくし)たち が一九〇二年(ねん)以来(いらい)、一等(いっとう)頼(たよ)りにしてきた のは人間(にんげん)の手(て)。私(わたくし)たちのスーツは、停 電(ていでん)になってもつくれますが、人間(にんげん)が 休(やす)むと、ボタン付(つ)けさえ出来(でき)ません。 私(わたくし)たちは、J(ジェイ)・プレスです。
スポーツ観戦(かんせん)で下品(げひん)な野次(やじ)を飛(と)ばす 時(とき)、地下鉄(ちかてつ)やバスで座席(ざせき)の奪(うば)い合(あ)い に加(くわ)わる時、女性(じょせい)に対(たい)して暴力(ぼうりょく)を振(ふ) るう時(とき)、男(おとこ)の友情(ゆうじょう)を裏切(うらぎ)らねばなら ない時(とき)、如何(いかが)わしい場所(ばしょ)に出入(でい)りする時人生(じんせい)に希望(きぼう)を失(うしな)った時(とき)には、ご 面倒(めんどう)でも、私(わたくし)たちの誇(ほこ)り高(たか)いスーツ を脱(ぬ)いで戴(いただ)きたい。傍(はた)の人人(ひとびと)に、宣 伝(せんでん)が嘘(うそ)だと思(おも)われてしまいますから。 私(わたくし)たちは、J・プレスです。
門外不出の虎の巻を公表したドジャースの 勇気について。
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糸井重里いとい しげさと
1975年入会
