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浮世話江戸紅 150 N(男):資生堂浮世話江戸紅
M:新内流しの三味線
N(男):赤、という色がまだとても贅沢だった頃、
まるで男もんみたいな地味ィな着物に地味な帯、
でも、そのまっ白な足の爪先に
赤い紅つけてる姐さんたちがいました。
江戸は深川、辰己芸者と呼ばれた姐さんたち。
女を売るのはご法度なんだ、あたしゃ芸一本だよ…って。
でも、やっぱり女なんですねぇ
SE:女の下駄の音、近づく
N(男):冬でも足袋をはかない爪先に、
ちゃんと紅つけて化粧して――。
芸者:ちょいと舟頭さぁん、向島まで行ってくれるかい。
N:へいっ
SE:舟、櫓の音
N:姐さん、辰己の姐さんですかい。
芸者:へぇ、そんな商売してて芸者の見わけがつくのかい。
兄さん、遊んでんだね。
N:いえ、その足の爪がね、赤いもんで、そいで…
芸者:ふん、ヒトの足なんか見て、たいした目ききだよっ!
M:テーマ曲
N(男):紅花の紅一匁が金一匁。贅沢な上にはかなくて
雪でも降ろうもんなら、二の字二の字の下駄の跡に
紅の色まで残ってしまう。
紅ってのは少しでもはげると目につくもんで
気ばたらきのない女は、
爪を染めるなんて、
できることじゃありません。
芸者:女はね、どこかひとつ赤いもんつけると
気持ちがやさしくなるんだって、
阿母さんが言ってたのさ。
N(男):男みたいな着物着て、男みたいなちゃきちゃきで
でも、その裏っかわには、何かが隠れていたんでしょう。
芸者:ほら、兄さん雪だよ。手ぇ、冷たくないかい。
SE:櫓の音、遠ざかる
N(男):白い素足に赤い紅
赤ってのは 胸にしみる色ですねぇ。
赤をつくる、資生堂。

NO.8998

広告主 資生堂
業種 化粧品・薬品・サイエンス・日用雑貨
媒体 ラジオCM
コピーライター 中山佐知子
掲載年度 1987年
掲載ページ 333