風頭山 ジイッ…と視線を感じ、
バックミラーを見る。
すると運転席すぐうしろの席で、
目をクルクルしているこどもがいた。

クラッチ…ギア…ハンドル…と、
大きな目で追われている。
そういやじぶんもその「特等席」で、
運転を見るのが好きだったな。

長崎は坂が多く、道がせまい。
とくにここ「風頭山」は、
坂道にそって家々が連なっていく路線。
そのあいだを、バスは縫うように進む。
ヘアピンカーブ…
そしてまた、ヘアピンカーブ…
「ジェットコースターみたいだ」と、
観光客はつぶやいたりする。

…まあ…なれたもので。

ギュッとハンドルをきる。
するとちいさな…パタパタという音。
「特等席」の少年が、
大きな音にならないように
両手の指先だけあわせ。
パタパタ…パタパタ…
それはちいさな、喝采をいただいた。

発車します。

NO.88964

広告主 長崎自動車
業種 貨物運輸・旅客運輸(鉄道・船舶・飛行機会社)・観光サービス(ホテル・自治体観光ポスター)
媒体 ポスター
コピーライター 渡邊千佳
掲載年度 2016年
掲載ページ 269