APPLE GRAND HOTEL 240  記者:マックのどこがいいんでしょう
作家:そうやって、
ひとくちにマックと言うがね、
僕が好きなのは、僕のマックだけなんだ。
他人(ヒト)のマックは大嫌いだ。
記者:と、言いますと?
作家:たとえばね、これはコーヒーカップであり、
誰にとってもコーヒーカップなのに、
マックは使う人によって
まったく違うものになるんだよ。
記者:なるほど。自分のマックは、自分だけのも
のになる、というわけですね。
作家:妙に人間ぽいんだ。
時々かんしゃくをおこしたかと思うと、
素直になったりしてね。
記者:それは誰かに似てますね。
作家:ぼくのことかね。
記者:え、いや、まあ。
作家:ふん。ここ3年ぐらい、
マックで書いてるだろ、だから、
作風も変わってきた気がするんだ。
記者:あぁ、ギ美人草以降ですね。
たしかに、
あれ以降変わっていらっしゃいますね。
作家:もう、ペンネームも変えようかと思ってね。
マック夏目とか。ちょうど、
こんなバタくさい顔してるし。
記者:はあ。
作家:あれ?笑わないね。
記者:いやぁ、面白いです。
ボーイ:マックのどこがいいんですか?
S:マックの理想は人間です。
Apple
ボーイ:マックのどこがいいんですか?
やっぱりゴミ箱だよ。
人間は間違える動物である
という前提からきているものなんだ。
ボーイ:あぁ、ゴミ箱。
あれはかわいいから好きです。
フロント:いらなくなったら、ポイと捨てればいい。
ボーイ:そうすると、ゴミ箱、ふくれるんですよね。
かわいいなぁ。
フロント:なまむぎ なまごめ なまたまご
ボーイ:なまむみ なまもめ……
フロント:ほーら、、間違えた。
ボーイ:すいません。
フロント:するとキミはゴミ箱に入る。
でもいいんだ
人間誰しも間違える。
だが、捨てても必ず救われる。
マックの思想は、
そこから出発しているんだ。
ボーイ:それは、すばらしい思想ですね。
フロント:いらっしゃいませ
男:予約した高畠だが。
フロント:承っております。
916号室へご案内するように。
ボーイ:うちのホテルは7階建てですよ。
フロント:あ、間違えた。
ボーイ:間違えた。素晴らしい。
フロント:716号室にご案内するように。
ボーイ:かしこまりました。こちらへどうぞ。
フロント:それでは、ごゆっくり。
女:ねぇ、マックのどこがいいの
S:マックの理想は人間です。
Apple
女:マックのどこがいいの
男:マックのどこがいいかって?
人生に迷った僕のような小羊を
導いてくれるからだよ。
女:私では、不満なのね。
男:そうじゃない。
マッキントッシュガイドのことだ。
女:えー?
男:つまり僕が…あぁわからない、
何もかもわからなくなってしまった。
いったい僕はどうしたらいいんだろう、
という時にマッキントッシュガイドが
ちゃんと教えてくれるんだよ。
女:あなたは、わからないことが怖いのね。
男:わからないより、わかる方がいいだろう。
女:私はわからなくたってかまわない。
僕のことがわからなくていいのかい?
女:いいわ。
男:僕はキミをわかりたい。
キミにマックのようにわかりやすくなっ
てもらいたいよ。女:わからない方がいいことだってあるわ。
男:そうかな? ちょっと待って。
ルームサービス。ああ、
マッキントッシュ、ううう…じゃない、
シャンパン頼む。
女:わからないから好きなのよ。
ベーシスト:マックのどこがいいんだい
S:マックの理想は人間です。
Apple
ベーシスト:マックのどこがいいんだい
ピアニスト:その答は、こないだの曲だよ。
ベーシスト:あぁ、聞いたよ。あれ、
全部マックで作ったの?
ピアニスト:あぁ、ひとりでデューク・エリントン
やってるようなものさ。
ベーシスト:ふうーん。
ピアニスト:たとえば、ピアノのアイコンを
クリックすれば、
一発でバド・パウエルが出てくるんだ。
ベーシスト:うーん、じゃあ僕は津軽じょんがら節を
エディット・ピアフがスキャットで歌う
ってのを作ろうかな
ピアニスト:いいね。それなら僕は、
ジミヘンのギターと
マリア・カラスのソロで、
銀座カンカン娘を作ろう。
ベーシスト:じゃあ僕は、フニクリフニクラを、
オスのチワワとメスのマルチーズが
ウィーン・フィルをバックに
歌うってのを作るぜ。
ピアニスト:そこまでいくと、
単なるおふざけじゃないかよ。
ベーシスト:そうかな。
ピアニスト:ふざけちゃいかんぞ、ふざけちゃ。
じゃ、やろうか。
ベーシスト:うん。
記者:マックのどこがいいんでしょう?
作家:そうやってひとくちにマックと言うがね、
僕が好きなのは、僕のマックなんだ。
NA:マッキントッシュ。
アップルコンピュータから。
S:Macの理想は人間です。
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媒体 TVCM
コピーライター 古川裕也 岡村雅子
掲載年度 1996年
掲載ページ 144

岡村雅子おかむら まさこ

1995年入会