モルツ 偽りのオーライ 120 SE:(ボールを打つ音、球場の大歓声が
あがる)
実況アナ:「打ったー。大きい。左中間センタ
ー山本浩二が追っている。捕ったー山
本浩二捕りました…」
男:あの頃、背番号8が守っている限り、
外野の間は絶対に抜けないように思
えた。
外野席に座る僕と親父はいつも背番
号8の後姿を眺めていた。
その日も、背番号8はセンターのポ
ジションに立っていた。
フラフラとセンター前に舞い上がっ
た打球を追い、オーライという風に
グラブを差し出した。誰もが平凡な
センターフライだと思った瞬間、ボ
ールはそのはるか前にポトンと落ち
た。
「へたくそ!」僕は思わず叫んでいた。
背番号8でもミスをする。そんな事
実に思わず興奮していたのかもしれ
ない。
でも親父の反応は僕と違った。
「違うな。あれはわざとだ」
セカンドランナーのスタートを遅ら
せるために、捕れないフライをわざ
と平凡なフライに見せかけたのだと、
親父は言った。
そんな背番号8をそのとき僕はズル
イと思った。
背番号8は仕事ができる奴だったの
だ。
僕は、いまにして思う。
オトナがビールを飲む意味を理解で
きなかったのと同じように、あの頃
は仕事をする意味もわかってなかっ
たのだ。
背番号8、山本浩二。
いい仕事をする奴はビールの味もわ
かってたんだろうな。
男ならモルツ サントリーモルツ

NO.3970

広告主 サントリー
受賞 新人賞
業種 食品・飲料
媒体 ラジオCM
コピーライター 川上徹也
掲載年度 1996年
掲載ページ 313