おいしい野菜をつくれ。
ただし、土も農薬も
使ってはいけない。 そのテーマが提示されたとき、Iは少し戸惑った。大和ハウス工業入社以来、総合技術研究所で環境保護や資
源リサイクルに携わってきた自分にとって、水耕栽培で無農薬野菜をつくれ、とう課題は、文字通り畑違いの
ように思えたのだ。だが、大和ハウスは、人・街・暮らしの価値共創グループとして、「食」の分野まで視野に
入れている。植物工場もそのひとつ。そう納得したとき、戸惑いは使命感に変わっていた。
しかし、いざ始めてみると、思うようなものがなかなかできない。茎が細かったり、歯が薄かったり…。家庭
菜園レベルならともかく、市場に流通する品質まで高めるのは、容易ではなかった。水耕栽培には、温度や湿度、
光の管理が欠かせない。一定の生育環境を保つ植物工場づくりに関しては、たとえば、密閉度の高い浴室用の
ドアを応用するなど、建築で培った得意の技術がいかせた、けれど、野菜づくりに近道はない。農業にとって
地道さや根気がいかに大切か。Iは身にしみて理解した。条件や環境を変えて、栽培を繰り返す毎日が続いた。
試作品を一般の方々に食べていただく機会がやってきた。8割の方から「おいしい」という感想をもらったと
き、Iの胸は高鳴った。土も農薬も使わないから、洗わずにそのまま食べられる。露地栽培なら1~2期作のと
ころ、約10期作も可能。そんな植物工場の実現が近づいてきた。けれど、Iの夢はその先にある。特別なノウ
ハウなしで、同じ品質の野菜ができること、畑のない都会で採れたての野菜が味わえること、ちいさな
植物工場付きの住宅地だって夢ではない、安心で安全な暮らしのかたちが、Iの眼にはくっきり見えている。

未来を、つなごう We
Build
ECO

NO.32849

広告主 大和ハウス工業
業種 精密機器・産業資材・住宅・不動産
媒体 雑誌
コピーライター 古居利康 岩崎亜矢
掲載年度 2011年
掲載ページ 202

古居利康ふるい としやす

1988年入会