サントリー サントリーウイスキー
懐しい酔心地 140 男:「神戸ハイボール」という名のその店は、元町の古いビルの地下にあった。
ここでハイボールを頼むと、小振りのグラスに三分目ほどのサントリーホワイトが注がれる。
SE:トクトクトク
男:ソーダ水をグラスの縁まで入れて、レモンピールをひと搾り
SE:シュワーッ
男:それだけで、飲むたびに明るい陽がさすような飲み物ができあがる。
不思議なことに、家でつくってみると味が違う。
同じサントリーホワイトとソーダ水を使って、レモンピールも搾っているのに…
SE:静かなバー
男:ある日、マスターから店をたたむと知らされた。
今夜が最後という日、思いきってそのうまさの理由をきいてみた。
マスター:グラスですわ
男:グラス?
マスター:洗いざらしの麻布で、とことん磨いて使うんです。一杯ごとにね。
ソーダの泡立ちも味も、ぜんぜん違ってきよります。
SE:キュッキュッ
男:その夜、思い出にもらったグラスで、さっそく試してみた。
SE:シュワーッ グビッ
男:この味だ!
もう一杯つくろうとして、気がついた。『またグラスを磨かなきゃならんのか…』
なくしたものの大きさが、はじめて胸にこたえた。
M:BG~
男:神戸の街もすっかり変わったけれど、今でも心が風邪をひいた夜は、例のグラスをせっせと磨いてみる。
一杯こっきりのハイボールを一口ふくむたびに、震災前のあの街の空気がよみがえる。
そして、また明日、新しい賑わいを取り戻しつつある神戸の街へ出かけていくのだ。
SE:トクトクトク…
これが俺、河島英五のウイスキー。
サントリー。

NO.3202

広告主 サントリー
業種 酒類・タバコ
媒体 ラジオCM
コピーライター 山下恵介
掲載年度 1998年
掲載ページ 48