涙は二度こぼれる その日、読売巨人監督王貞治は迎えの車の中で、”左手にしよう
か右手で抽こうか。”少年のように思案していた。”自分は左打者と
して大成した、ヨシ左手で清原君を抽き当てる”そう決心してドラ
フト会場に乗り込んだ。出迎えの球団幹部とスカウト達が耳うちを
するように囁いた。「監督、清原は5球団が融合します、そこで実は
桑田なら獲れるかもしれません」王は張りつめていた気持ちが若干
萎えた。
「でも桑田君は早稲田にいくんじゃないの」「そうなんです
がウチが指名したら心が動くという確信があります。」
 思慮深い王は頭を回転させた。”自分を超えるかもしれな清原
和博という選手を育ててみたい、一方指揮官にとって投手力に充分
という表現はない、ましてや桑田真澄という逸材が獲得可能という
のだから、いやその背景にはスカウトの並々ならぬ努力があればこ
そ、従ってみるか”私は入団直後の桑田君にいじわるな質問をして
みた。「もし2位指名だったら巨人には来なかったでしょ?」桑田
は「いや、キヨが1位で僕が2位でも巨人なら入りました。」
 去年の今頃、”清原和博引退試合”の日、王は清原に、艱難辛苦
の野球人生の労をねぎらい花束と言葉を贈った。「もし生まれ変わ
ることがあったら同じチームでホームラン競争をしよう」・・・と。
清原の心は熱い涙でゆさぶられた。"世界の王さんが自分の有終に
こんな素晴らしい言葉をかけてくれた”感謝が過去のわだかまり
を包みこんだ。思えば王は、20余年前のドラフトの朝のことを一言
たりとも清原には話さなかった。
王貞治という男はそういう人間な
のだ。
 小説にしたいようなドラマがちりばめられているドラフト、今年
も健康体で歴史の目撃者になれそうだ。
涙のジャイアンツおやし
徳光 和夫

ファンと祝う新しいドラフト会議。
レグザ
で観よう。

NO.28659

広告主 東芝
業種 その他(どこに属するか不明なもの)
媒体 その他
コピーライター 星野奈美
掲載年度 2010年
掲載ページ 255