カロリーメイト/十八歳と二六歳篇 120秒 母:
おかえり〜

モノローグ(娘):
母の中のわたしは、
どうも十八歳で止まっている。

母:
よう帰って来た。

モノローグ(娘):
実家を出て行った、
高校卒業直後のわたしである。

母:
夜は、あんたの好きなハンバーグ。

モノローグ(娘):
二六歳のわたしは、
めねぎのにぎりが大好きで。

母:
あ。あんた、にんじん嫌いやったね。
よけとき。

モノローグ(娘):
にんじん嫌いは大人になったら、
自然に治った。

母:
仕事は大丈夫?
あんた、がんばりすぎるから…

モノローグ(娘):
十八歳のわたしは、
たしかにがんばりすぎ屋さんだった。
高三の夏まで部活に明け暮れ、
引退試合の次の日から、
がむしゃらに受験勉強。
第一志望は無理だったけど、
第二志望の地方国立大に合格。
実家を出た。

母:
ちゃんと栄養あるもん、食べてんの?

モノローグ(娘):
肌荒れしない程度には。

母:
一人暮らしは物騒やからちゃんと、
アレしなさいよ。

モノローグ(娘):
実はいま一人暮らしではない、
ということをまだ言っていなかった。

M:
♪〜

モノローグ(娘):
母は、十八歳のわたしのことを、
誰よりも知っているが、
二六歳のわたしのことは、
あまり知らなかったりする。

母:
また、野菜とか送るからね。

SE:
ピンポーン
ビリビリ(ガムテープをはがす音)

モノローグ(娘):
母から送られて来たダンボールには、
裏の畑でとれた野菜。
と、すみっこにカロリーメイト。
ああ。母の中のわたしは、
どうも十八歳で止まっている。
カロリーメイトを見ると、
二六歳のわたしは、
十八歳のわたしを思い出して、
お腹のこのへんがなんか、キュッとする。
二六歳のわたしは、
がんばるだけじゃ意味ないよ、
なんて言われております。
すう〜〜はあ〜〜〜(息を吸ってはく)
カロリーメイトよ、
二六歳のわたしはがんばってますか。

NO.2019345

広告主 大塚製薬
受賞
業種 食品・飲料
媒体 ラジオCM
コピーライター 福居亜耶
掲載年度 2019年
掲載ページ 353