隠された「角」 世界の銘酒を味わい尽くした私だが、君が新しい
グラスを持って現れるたびに緊張するよ。まず
最初の一杯がよかったね。貴婦人のような酒だ。
礼節をわきまえている。あたりは実に柔らかで、
そのくせ口に含んでも少しも乱れない。次の酒は
重厚で男性的だ。力がみなぎっている。勇気を
与えてくれる。男が重大な決断を下す前の一杯
にふさわしい。三杯目は詩人だな。デリカシーが
ある。和風料理に合わせるなら、
このウイスキー
だ。四番目には少し注文をつ
けたい。いや、決してまず
いというのではない。あま
りの高峰に囲まれたために、
ほんの少し低く見えるだけ
だ。ハイボールにすれば素晴ら
しいだろう。され、五番目のこの
酒はまさしく最高峰だ。この
琥珀の液体には、果もなければ
限りもない。けだし名門の育ちであ
ろう。ところで、次の一杯、いただけるか
な『ええ、どうぞ、どうぞ(しかし、彼も
よく飲むなあ、みんな同じ「角」なのに)』

いつものボトル。日本のウイスキーの原典。
サントリー角瓶

NO.14212

広告主 サントリー
業種 酒類・タバコ
媒体 新聞
コピーライター 仲畑貴志
掲載年度 1977年
掲載ページ 58