背番号3 180 SE:野球場のガヤ
N:背番号3
今夜も僕は、かつての「背番号3」に、熱い声援を送っ
ている――。
SE:カラカラ(実況中継テープ)
N:月賦でやっと手に入れたラジオ。
叔父貴から入社祝いにもらった、サントリー角瓶。
昭和33年。
社会にデビューしたての僕は、不釣合いにぜいたくな
亀甲模様のボトルを傾け、大型ルーキーの門出に聴き
入った。
SE:(実況中継テープ)
N:僕の月給も、高度成長につれてあがり、角瓶も切らさ
ず買えるようになった。
あっそう、そう。その頃、ラジオの他に、テレビを持て
る身分になったっけ。
もちろんモノクロで、月賦だけれど、テレビと角瓶の組
合せは、僕を、えらく豪勢な気分にしてくれた。
SE:(実況中継テープ)
N:動物的なカンを持ち、どこまでも陽気な「背番号3」。
おっちょこちょいで、人間らしいところが、僕は、たま
らなく好きだった。
ホームランを打ちながら、一塁ベースを踏み忘れてアウ
トになったり、たび重なる敬遠に怒って、バットを持た
ずに打席に入ったり…。
エピソードには、こと欠かない。
巨人というチームは、好きじゃなかったけれど、「背番
号3」は憎めなかった。
僕のヒーローだった。
SE:(実況中継テープ)
N:今、僕は課長になり、「背番号3」は、90に変わったけ
れど、我が家のウイスキーが、サントリー角瓶である
ことにかわりはない。
N:ところが、である。時代が変わり、巨人が往年の強さ
を失ったとたん、今までファンを自称してきた連中が、
90番を罵倒し始めたではないか。
ピンチの時に、どこまでも信じて応援するのが、ホント
のファンというものじゃないのか!僕は、
断固、そう思う。
SE:(実況中継テープ)
N:負けるなヨ!背番号90
SE:カラーン!トクトク
N:僕は、今夜も、サントリー角瓶を飲みながら、かつての
「背番号3」に熱い声援を送っている――
SE:歓声。

NO.11751

広告主 サントリー
業種 酒類・タバコ
媒体 ラジオCM
コピーライター 中山幸雄
掲載年度 1981年
掲載ページ 290