かなしい夢 120
N:それは、まだ、私が生まれる前のこと。
ほの暗いゆりかごの中で、心地良い眠りについていると―
何としたことでしょうか。
人間たちの悲しい夢が、
ひたひた、ひたひた、ひたひた、
打ち寄せる波のように、私の身体をひたすのでした。
ひたひた、ひたひた、ひたひた、
M:BG~
N;それは、遠い昔のことだったそうです。
悲しい夢を見てしまった一人の男が、こんなことを考えたのです。
さて、悲しみの消える場所がない、というのは困ったことだ。せめて私は、世界中の悲しみを投げ入れても、投げ入れても、決してあふれることのない、一本のびんを作り、そしてその中には、どんな悲しみも溶かしてしまう、不思議な水を満たしておこう。
ひたひた、ひたひた、ひたひた、
打ち寄せる夢の中で、私はやっと、自分にめざめ、
その時、私は、
一本のサントリーオールドになりました。
あなたが悲しい夢を見たら、
私の中に溶かして下さい。
SE:トクトクトク
N:私はサントリーオールドです。

NO.10343

広告主 サントリー
業種 酒類・タバコ
媒体 ラジオCM
コピーライター 中山佐知子
掲載年度 1984年
掲載ページ 353