《書籍紹介》小さく言葉にする習慣/勝浦雅彦著

会員の勝浦雅彦さんから著書の紹介です。
★
小さく言葉にする習慣
「ここだけ生きてるね」
若手コピーライターだった頃、先輩にコピーを見せたら、
何枚もページをめくった末に、ある一行を指してそう言われました。
あー、どうしよう。これ、褒められているんだろうか。
ほかは全部死んでるってことだろうか。
聞き返す勇気もなく、あとでその一行を何度も読み返しました。
すると確かに、そこだけ自分が本当に感じたことを書いていたんです。
苦し紛れかもしれないけど、うまく見せようとも、
誰かの真似をしようともしていなかった。
あの一言で、言葉との向き合い方が少し変わりました。
それから二十年以上経った今でも言葉にするのが苦手です。
会議で意見を求められると、
言いたいことはあるのに、喉が詰まるような感覚になる。
これがコピーライターという職業の厄介なところで、
関西人がオモロいことを言えて当然と思われるのと同じくらい、
言葉のプロには常に気の利いた発言が期待されます。
いや、困ったなあ。誰か、うまいこと言ってくれませんか。
そんな人間が言葉について本を書くというのも、なかなか図々しい話ですが、
だからこそ伝えられることがあると思いました。
世の中は空前の言語化ブームです。
素早く考えを整理し、的確に伝えることが評価される。
でも、言葉がすぐに出てこない人の頭の中が空っぽなわけではありません。
簡単には言葉にできないほど、大切な思いだってあるはずです。
この本では心理学や哲学、文学、広告の現場で経験したことを手がかりに、
言葉のままならなさと向き合いました。
あの先輩に言われた一言は、
やがて私が後輩の原稿を見るときにも口をついて出るようになりました。
言葉は人から人へ渡っていくんでしょうね。
この本を読んで、立派な言葉を話せるようになってほしいとは思っていません。
誰かの正解を借りるより、自分の中にある、
まだ不格好でも生きている一行を見つけてほしい。
そして、どこかであなたの「続き」を書く力になれたら、
こんなに嬉しいことはありません。
- 出版社 : ディスカヴァー・トゥエンティワン
- 発売日 : 2026/7/24
- Amazonで見るのはこの文字をクリック
<こちらもおすすめ>

