そんなヒロシに騙され~
二日目。
♪そんなヒロシに騙されー(高田みずえ)
普通コピーライターはコピーができたら帰るのだけど
佐々木さんは、夏の夜は冷房切れるビルで僕がレイアウトしてると別の仕事やっていて
靴下脱いで床ペタペタ歩いて、全然帰らない。ササキヒロシというより座敷童。
帰ってくれーと念じる中、朝方4時くらいに見せに行くと、
「全然良くない。このレイアウトのどこがいいか説明してくれる」なんて
「良くないからやり直して」じゃ、ダメなんですかね。
とにかく土日のたびにどさっとコピー用紙の束が出てくるので
僕は埼玉県白子でお母さんと二人暮らしの佐々木さんは
お母さんにキャッチ書いてもらってる説を流してうっぷんを晴らしたり。
もちろん、晴れるわけもなく。
そんな佐々木さんはその頃黄色いゴルフに乗っていて
たまに会社にもクルマで来て、僕が朝方仕事が終わってタクシーでゆっくり帰ろうとしてると
同じ方向の佐々木さんが「関、送ってこうか?」
「え、いいです」って言ったのが「いいんですか?」と聞こえたらしく
「いいよ遠慮すんなよ」なんて。
で、夜の不忍通り。
「関はさ お得意の言うこと聞きすぎなんだよ それ聞いてつまんないの作って
話題にもなんなかったら結局切られちゃうから。
多田なんて作品集の次どんなの入れるかしか考えてないよ」
はいはい多田くんに頼んでくださいよ。
そうかと思うと、お得意さんの理不尽なる直しも、
「もっと面白くなるチャンス」とか言ってまた考えさせられて、
悔しいことに良くなったりして余計腹立った。
あと、なんでこんなに人の心に届くコピーが書けるか、というと
「俺には何故かヒトの気持ちがわかるからなんだ」とかなんとか。
ようやく田端に着いて分かれ道で解放されて家までの道、
俺の気持ちはなんもわかってねえのになぁと
上を向いて歩いたもんだ 涙がこぼれないように。
あ、また佐々木さんの好きな歌だ やめとこ、なんて。
つづく
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