50年もの、
熟成住宅。 化学の研究に取り組んでいた父は、
この家を建てる時、壁材のメカニズムに惚れ込んで購入を決めた。
地球が数万年かけて生み出す「トーモライト結晶」を
ふんだんに含んだ壁は、乾燥による収縮や膨張が小さいため、
夏の酷暑や冬の乾燥に強く、経年変化が極めて少ない・・・
そんなセールスマンの話に、いたく感銘を受けてしまったらしい。
そんな父は、この家で毎日のようにワインを飲んでいた。
ワインの熟成も化学がもたらすものだから、ごく自然な流れだ。
「ワインは教養」それが父の口癖だった。
作られた時代の世界情勢、文学的な味わいの解釈。
そして時が経つことで、それまでにない価値が生まれること。
壁材にもワインにも、父は「物」ではなく
「物語」を求めていたのかもしれない。
やがて父が亡くなり、この家を建て直すか検討している時、
壁や柱の状態を確認してみた。するとそれらは、
まるで時が止まったかのようにキレイな状態だった。
家としての基礎が劣化していないのだから、建て直す必要がない。
むしろそこに快適を足していけばさらに価値が深まっていくはず。
そう考え、部分的にリフォームすることにした。
父がいたころと変わらないにおい。階段を上り下りする音。
日向でくつろぐ二匹の愛猫。リフォームする前からある、
なんでもないようでかけがえのない「物語」が
ここでは今も脈々と続いている。
時とともに価値が深まっていく。
そう、それはまさにワインと同じだった。
わが家はこれからも、子へ、子から孫へと暮らし継がれながら、
幸福へ向かう化学変化を繰り返していくだろう。
ひょっとしたら父は、そんな未来を想像しながら
ひとり楽しんでいたのかもしれない。
食事の向こうでワインの香りに酔いしれていた、
あの幸せそうな表情で。

「半世紀ヘーベルハウス。築50年の家とその家族の記録」より

家を育てる権利。
HEABEL HAUS

NO.2024446

広告主 旭化成ホームズ
受賞
業種 精密機器・産業資材・住宅・不動産
媒体 新聞
コピーライター 野澤幸司
掲載年度 2024年
掲載ページ 351