角瓶 父が飲まなかったウイスキー 150 SE:
とうふやののラッパ、母の下駄の音
N:
とうふやがラッパを鳴らすと、母はいつも下駄の音高く路地を走った。
SE:
トントントン、トントントントン、
N:
やがて台所でネギを刻む音が聞こえると、きまって父が帰ってきた。
SE:
角びんを注ぐ音
N:
父は毎晩ウイスキーを飲んだ。サントリー角びんを飲んだ。
小さなグラスで二杯三杯。あの頃の
つつましい暮らしの中で、角びんは父の珍しい贅沢だった。
M:
ラジオから流れる一丁目一番地のテーマ
N:
父はラジオに合わせて鼻歌を歌う。
チビリチビリと措しそうに、小さなグラスを口に運ぶ。
そんな時、父は眉間のシワがのびて、
目が細くなるのだった。
ピカピカの自転車が欲しい!
ある晩、僕は父にねだった。ピカピカの自転車は1万6千円。
父の月給の半分を越えていたと思う。
SE:
自転車のベル、子供たちの声。
N:
それから父は長い間ウイスキーをやめた。
僕の自転車を買った後、長い間、ウイスキーをやめた。
BG~
N:
僕の父は毎晩ウイスキーを飲んでいた。
でも、僕が覚えているのは…・。
父さん!あなたが飲まなかったウイスキーだ。
あのピカピカの自転車と引き換えになった父さん
のウイスキーを、僕は、いまでも、覚えています。
SE:
角びんを注ぐ音。
N:
あの頃の父さんのウイスキー。
いまは僕のウイスキー。
サントリー角びん。
NO.9443
広告主 | サントリー |
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受賞 | 新人賞 |
業種 | 酒類・タバコ |
媒体 | ラジオCM |
コピーライター | 中山佐知子 |
掲載年度 | 1986年 |
掲載ページ | 368 |