朝日新聞デジタル/プロメテウスの罠
防護服の男 第六話 268秒 NA:
ギリシャ神話によると、
人類に火を与えたのはプロメテウスだった。
火を得たことで人類は文明を発展させた。
しかし、落とし穴があった。

NA:
朝日新聞、プロメテウスの罠。
シリーズ、防護服の男、第六話。
        
S:
プロメテウスの罠 シリーズ防護服の男 第六話

NA:
関場和代は3 月14 日、
会津若松市の親戚宅に避難した。
家は菅野みずえの家に近い
浪江町南津島にあった。
その後も避難指示がないため
4月2日、ひとまず自宅に戻った。
数日して、家の前に自衛隊の
ジープがとまり、隊員が降りてきた。
安否確認で来たという。
そのころ浪江町の放射線量が
高いことが報道されていた。
それが心配で、おそるおそる尋ねた。
    
NA(和代):
この辺の線量はどのくらいですか
    
NA(隊員):
ここは大丈夫です。
私たちは線量計を付けています。
1日にどのくらい線量を浴びたか分かるんですよ。
    
NA(和代):
そうなんですね。
        
NA:
和代は安心した。家に閉じこもるのをやめ、
近所に出かけていった。
4月17日。近くの橋の上にいると、
男が近づいてきた。
フリージャーナリストの豊田直巳だった。
    
NA(和代):
すみません、うちの線量を測ってもらえませんか。
        
NA:
豊田は敷地のあちこちを測りはじめた。
玄関の雨どいの下を測ったときだった。
    
NA(豊田):
ワッ、これは大変だ!
    
NA(和代):
どうしたんですか・
    
NA(豊田):
……。
    
NA(和代):
本当のことを言ってください
    
NA(豊田):
……。
    
NA(和代):
お願いです・
    
NA(豊田):
2時間いたら、1ミリ吸います
        
NA:
豊田によると、そのときの線量は
毎時500 マイクロシーベルトを超えていた。  
2時間いただけで年間許容量の
1ミリシーベルトを超える値だ。
具体的な数字を初めて聞かされ、
大変なことだと初めて自覚した。
和代はあわてて身支度し、
豊田に見送られて家を飛び出した。
数日後、ネコを引き取りに再び家に帰った。
警視庁のパトカーが敷地に入ってきた。
30 代くらいの警察官だった。
    
NA(和代):
ここって高かったんですね
        
S:
でも政府から止められていていえなかったんです。
        
NA:
そうなんです、高いんですよ。
でも政府から止められていて
いえなかったんです。
警察官はそう答えた、
と和代は記憶している。
和代はびっくりした。
ジープの自衛官がいったことは何だったのか。
    
NA(和代):
もし自分の家族だったら、同じことがいえますか。
真っ先に逃がすでしょう。
私らのことは、しょせんひとごとなんですかね
        
NA:
7月、中国の高速鉄道事故で証拠隠しが発覚した。
日本のメディアは中国政府の対応を厳しく批判した。
和代は腹が立ってくる。
   
NA(和代)+S:
日本だって同じじゃないの

NA:
プロメテウスによって文明を得た人類が、
今、原子の火に悩んでいる。
福島第一原発の破綻を背景に、
国、民、電力を考える。

NA:
朝日新聞、プロメテウスの罠。つづく。
        
S:
朝日新聞DIGITAL

NO.87238

広告主 朝日新聞社
業種 マスコミ・出版
媒体 WEB
コピーライター
掲載年度 2014年
掲載ページ 421